3条の修繕工事について、震災によって年度内の完了が難しい場合、事故繰越をすることができるか。
地方公営企業法第26条第2項に基づき、3条予算、4条予算いずれについても、避け難い事故のためであることを説明できる範囲で事故繰越することができる。
事故繰越ができるのは、年度内に支出負担行為がなされたものに限られる。年度内に契約その他の行為がなされなかったものについては、当該年度の決算において不用額とし、あらためて翌年度の支出予算に計上して支出しなければならない。
手続としては、建設改良繰越と同様、繰越計算書をもって翌事業年度の5月31日までに地方公共団体の長に報告しなければならない。
建設改良繰越の具体的な手続について教えて欲しい。
翌事業年度の5月31日までに予算繰越計算書(則別表第9号)を地方公共団体の長に提出する必要がある。当該計算書は次の議会で報告される。「予算計上額」「支払義務発生額」にはそれぞれ、予算に関する説明書、決算書類または決算付属書類に記載する額と整合する額を記入することが望ましい。
年度内に契約を締結した、3条・4条予算のそれぞれの工事について、この度の震災が理由で予算繰越を行う場合、繰越を行う理由が同じであるため、全て事故繰越とした方がよいか。それとも、4条予算の工事については、建設改良繰越とすべきか。
事故繰越は支出予算の金額のうち、年度内に支出の原因となる契約その他の行為をし、避け難い事故のため年度内に支出義務の生じなかったものについて繰り越すものであり、建設改良費に限らず、全ての支出予算について可能である。
建設改良費繰越は予算で定める必要はなく、単に建設又は改良に要する経費であるという経費の性質に基づいて一律に認められるものであり、一度建設改良費繰越として繰り越したものを再度事故繰越する場合のほかは、事故繰越の制度を活用する余地はない。
本件の場合、3条・4条それぞれの工事が、予算を繰越す理由が震災の影響という同じ理由であることから、両者とも事故繰越としなければならないといった決まりはないので、最終的には事業体の判断となるが、基本的には4条の予算繰越は、建設改良費繰越とすべきである。
震災による復旧等のために補正予算を組む。
(1)支出科目としては何が適当か。
(2)配水管の復旧は3条で執行可能か。
(1)災害復旧工事を行う場合においては、通常の建設改良工事と同様に処理するものである。また、予算処理としては、建設改良にかかる支出として取り扱うが、目において通常の建設改良費と区分して計上すべきである。
(2)財務規定等に定める修繕費支弁基準に基づき、軽微であると認められる復旧工事(簡易な配管等)については、3条の特別損失として執行する。また、それ以外の改良を伴う復旧工事については、除却損を特別損失に計上しつつ工事そのものは4条で執行することになる。
今回、日本水道協会の要請を受け、東北へ災害復旧支援を行った。支援に係る経費について、支出費目(予算科目)をご教示いただきたい。また、これらの費用は一般会計で負担することが適当か。
営業費用は、「主たる営業活動から生ずる費用を原水費、浄水費、配水費、給水費、受託工事費、業務費、総係費、減価償却費、資産減耗費その他営業費用に区分して記載する。」とあり、営業外費用は、「金融及び財務活動に伴う及び固有の事業活動に係る費用以外の費用を記載する。」となっている。
今回の災害復旧に伴う応援に係る費用は、基本的には「固有の事業活動に係る費用以外の費用」ということで営業外費用でよい。ただし、金額が大きいのであれば特別損失で処理することも考えられる。
一般会計が費用負担するかどうかは、事業体により取扱いが異なると思われるため、貴市の一般会計の担当者に確認をしていただきたい。
近隣の市町村との「緊急時等における水道用水の相互融通に関する協定」に基づき、受水した場合の対価はどの科目で経理すればよいか。また、分水した場合の収入についてはどうか。
受水については「営業活動には関係のない災害等の臨時的な原因に基づく損失」として、特別損失で問題ないと思われる。また、分水した場合の収入については、「営業収益」のうち、給水収益又はその他営業収益として収入することが適当である。
本市では、緊急時のために隣接市と協定を結び、連絡管を設置している。この度、震災に伴う計画停電の影響等により、連絡管に量水器を設置した。量水器は、一時的な使用(数ヶ月先か1〜2年先かは現時点では不明)であり、計画停電が終了後に撤去する予定である。設置及び撤去の際の経理処理はいかがか。
出庫時に借方に費用、貸方に貯蔵品として費用化し、使用が終わった段階において再使用が可能な状態であれば適正な価格で借方に貯蔵品、貸方に営業外収益雑収益として経理を行う。
東日本大震災の被害に伴う災害損失について、会計処理及び予算処理の仕方について教えてほしい。
(1)特別損失の臨時損失として計上する。災害による損失は、経常的な損失又は費用としてではなく、特別損失として取り扱うのが適当である。
(2)災害損失額が、その年度の費用総額に比べて極めて少額である場合には、その年度の営業外費用として処理できる。
(3)さらに、損失額が多額であってその額をその年度において負担することが出来ない場合には、繰延勘定として整理できる。この場合は、以下の条件に該当する場合のみ適用できる。
- 当該年度未処分利益剰余金から当年度の処分予定額を控除した金額によっても補てんし得ない程巨額であること。
- 次年度以降5年度以内に発生する利益をもって補てんしうる確実な見込みがあること。
- 企業の営業活動に欠くことのできない手段である資産の上に生じた損失、即ち資本的損失であること。
- 繰り延べても企業の財政的堅実性を害しないこと。
震災に伴う減免で、(1)一般会計からの補助を受けることは可能か。(2)また、可能だった場合、減免した全額を補助してもらえないと、欠損金が生じる恐れがあるが、欠損金の処理はどうすればよいか。
(1)地方公営企業法第17条の3に基づき、補助を受けることは可能だが、企業会計と一般会計との協議による。
(2)欠損金は、1.繰越利益剰余金でうめる、2.利益積立金でうめる、3.繰越欠損金として翌年度に繰り越す。ただし、議会の議決を経て4.任意積立金、5.資本剰余金でうめる事も可能。
なお、積立金及び資本剰余金をもって欠損金をうめる場合は、欠損金処理計算書(案)(利益積立金の場合は(案)は不要)により行うこととなる。
東日本大震災の影響で現在もまだ完全復旧には至っていない。そこで平成23年3月分の水道料金を全額免除することとした。水道料金は、一度調定をおこし調定減をするべきか。又は、最初から調定はおこさないでおくべきか。
調定とは収入の内容を調査し、その額を決定する行為であり、収入の前提をなすものである。料金の減免はこのような調定の一環をなすものと考えられる。したがって、いったん調定した後に減免することとなった場合であれば、調定減すべきである。また、これから調定する場合であれば、減免後の金額で調定すべきである。
なお、23年度において、22年度の損益を修正するのであれば、過年度損益修正損として処理することとなる。
この度の計画停電により、本市の浄水が不足しているため、近隣の市町村との「緊急時等における水道用水の相互融通に関する協定」に基づき、水の融通を受けようと考えているが、水道法上の制約等はないか。
水道法上、市町村間等における協定に基づき適切に運用するのであれば問題ない。
なお、水道法で関連する事項としては、水道法第40条の「水道用水の緊急応援」が考えられるが、本条は都道府県知事又は厚生労働大臣が「緊急に水道用水を補給することが公共の利益を保護するため必要であり、かつ、適切であるとき」に「水道事業体等から他の水道事業体等に対して水道用水を供給すべきこと」を「命ずることができる」というものであり、前提として、水道事業体間において相互融通の措置がなされていない場合の措置である。
したがって、協定等に基づき適正に運用されているのであれば、相互融通に先立ち、知事の命令は不要である。
震災対応として職員が修繕に尽力しているが、修繕にかかる時間外勤務手当について、修繕引当金の取り崩しによって予算措置することはできるか。
修繕引当金は、将来の修繕費の必要額を見積もることにより計上されたものであるため、職員給与費で支出すべき費用に充てるべきではない。
震災対応にかかる時間外勤務手当等の職員給与費について、特別損失として計上してよいか。
災害損失等の費用については特別損失として計上すべきであるが、職員給与費の場合、災害損失と本業部分を区分することは実務的に煩雑となるため、職員給与費として計上するのが妥当だと思われる。
なお、職員給与費は流用禁止項目であるため、その支出に当っては補正予算を行う必要がある(予備費の充当はできない)。また、補正予算によって対応できない場合は専決処分で対応することも可能と考える。
家の基礎(土台)が地震・津波で削られて傾きかけていた。その後、断水終了に伴う通水による給水管からの漏水によって家の基礎がさらに削られて家が傾いたので、補償してほしいと言われたが、水道事業体としてどのように対応したらよいのか。
水道事業体の故意・過失又は水道施設の瑕疵に起因する損害については責任を問われる場合もあるが、これに該当しない不慮(予測・回避不能)の事故の場合は法律上の損害賠償責任はない。(民法第709条・国家賠償法第2条に該当しない)
民法に基づく損害賠償の場合、請求者には通水による給水管からの漏水と漏水を原因とする損害(家屋の傾斜)発生との因果関係を主張・立証する必要があり(民法第709条)、因果関係が立証されない限り賠償の必要はないと思われる。
しかしながら、今回の件については、常時給水可能な状況において生じた給水管からの漏水ではなく、断水(漏水が発生していない)地域に対し水道事業体が通水したことによって生じた漏水であり、水道事業体の作為が関係しているため、漏水防止等の管理責任は水道使用者等だけでなく、水道事業体としてもある程度の管理責任が生じることも考えられる。
今回の計画停電に際して、補正予算を組んでいる時間がないが、弾力条項を適用して問題ないか。
弾力条項は業務量の増加に伴う直接の経費について適用されるものであり、収益と費用が直結していることから定められている規定であるため、適当ではない。予備費支出、費目流用を行った上でなお支出することができない場合は、専決処分によることが適当である。
震災の影響により補正予算を組むこととなった。災害損失にかかる費用については一般会計から収入する予定である。
(1)補正予算の作成方法
(2)補正予算の作成にあたり、特別損失の「目」の名称はどうするべきか。
(1)予算書について、一般会計からの繰入れについては地方公営企業法第17条の3に基づく繰入として「他会計補助金(営業外収益)」で収入することが望ましい。支出は(項)特別損失とする。年度内の4条工事について補正が必要であれば建設改良費も増額が必要である。合わせて、予算に関する説明書において関連する書類(実施計画書、予定貸借対照表等)も訂正する。実施計画書については、備考欄に説明を書いておくことが望ましい。
(2)特別損失の(目)は臨時損失が適当である。